昼休みの給湯室で、同僚の女性と二人になったことがあります。

何か話さなければと思ったまま、お湯が沸くまでの数分間、僕は一言も話せませんでした。現実の世界で恋愛を始めるには、こういう時間を越えていく必要があります。僕には、それがどうしてもできませんでした。

そんな僕ですが、36歳のときにマッチングアプリを通じて結婚しました。いまは家族4人で暮らしています。

この記事では、人間関係が苦手な人にこそアプリが向いている、と僕が思う理由を書きます。「使うべきだ」と言いたいわけではありません。あくまで、選択肢の一つとして知ってほしいという話です。

現実の出会いには「三つの壁」がある

振り返ると、現実の世界で恋愛を始めるには、三つの壁がありました。

一つ目は、相手を選べないことです。

現実の出会いは、職場・学校・バイト先など、たまたま同じ場所にいる人に限られます。その中に気の合う人がいるかどうかは、ほとんど運です。

二つ目は、会話の壁です。

知り合ってから仲良くなるには、雑談を重ねる必要があります。話し下手にとって、ここが最初の難関になります。

三つ目は、「恋愛対象として見てもらう」壁です。

仮に雑談ができても、相手が自分を恋愛の相手として意識してくれない限り、先へは進めません。しかも相手が出会いを求めているかどうかすら、外からはわかりません。

三つの壁を自然に越えられる人は、それでいいと思います。でも僕は、一つ目と二つ目の間で止まり続けました。

話しかける勇気を出せ、と言われればそれまでです。でも僕は、その勇気を出せないまま30代になりました。勇気の問題として片づける前に、場所の構造を疑ってみてもいいはずです。

アプリは「スタートと目的が同じ」

マッチングアプリが決定的に違うのは、ここです。

アプリにいる人は、お互いに出会いを求めて登録しています。つまり、スタートラインと目的が最初からそろっています。

現実の世界でいちばん高い壁は、僕にとって三つ目でした。「そもそも相手は出会いを求めているのか」「自分は恋愛対象として見られ得るのか」。この不安を抱えたまま関係を進めるのは、話し下手には荷が重すぎます。

アプリには、この一番高い壁が最初からありません。マッチングした時点で、お互いに相手を探していることは確認済みだからです。「出会いを求めていること」を隠さなくていい。それだけで、心理的な負担は大きく減りました。

残るのは会話の壁だけです。そしてこれは、話し下手なりのやり方で越えられると僕は思っています。

話し下手の「真面目さ」が強みになる場所

アプリには、僕たちに合う点がもう一つあります。文字のやりとりから始まることです。

対面の会話では、考える前に言葉を求められます。僕はここで、頭が真っ白になってしまうのです。でもメッセージなら、考えてから書けます。送る前に、何度でも読み返せる。「考えてはいるのに言葉が出ない」タイプの中身を、そのまま届けられる場です。

そして、文字のやりとりで最後に信頼につながるのは、面白さより誠実さだと僕は感じています。返事の速さや面白さを競う場ではありません。盛らない言葉を、相手のペースに合わせて一通ずつ返す。あなたの真面目さや誠実さは、ここで初めて強みとして働きます。

会ってからの会話が不安な人は、話すより聞くことから始めてみてください。考え方は 聞くだけ恋愛の始め方 にまとめています。

向き不向きはある。現実の出会いも否定しない

ここまで書いてきましたが、アプリが万能だとは思っていません。

文字のやりとり自体が苦痛な人もいます。知らない人と会うこと自体が、大きな負担になる人もいるはずです。合わないと感じたら、無理に続ける必要はありません。疲れたら、いったんアプリから離れる期間があってもいいと思います。

職場や趣味の場など、現実の出会いを望む人を否定するつもりもありません。時間をかけて人柄を知ってもらえるのは、現実の出会いの良さです。

僕が言いたいのは、一つだけ。「現実で出会えないなら恋愛は無理だ」と諦める前に、壁の少ない場所がもう一つある、ということです。

使うなら、安全の確認だけは最初に

利用を考えるなら、これだけは守ってください。

マッチングアプリは18歳以上が対象です。国に「インターネット異性紹介事業」の届出をしているサービスを選んでください。本人確認の仕組みがあるかどうかも、登録前に見ておくと安心です。

初めて会うときは、昼間の公共の場を選ぶことをおすすめします。やりとりの中でお金の話が出たら、その相手とは距離を置いてください。