初めて会う日の駅前で、僕はスマホを握りしめて立っていました。
改札から人が出てくるたびに、心臓が跳ねます。頭の中では「ちゃんと声が出るかな」「噛まないかな」がずっと回っていました。
あの日、待ち合わせに来てくれた人が、いまの妻です。
僕は口下手で、人見知りで、あがり症です。その僕が結婚したのは36歳のときでした。出会いの場所は、マッチングアプリです。いまは妻と、小学生と幼稚園の子どもが二人。家族4人で暮らしています。
この記事では、僕がアプリで結婚に至るまでの経過を、事実ベースで書きます。武勇伝にするつもりはありません。うまくいった話と同じくらい、緊張していた話も書きます。
アプリを始める前の僕
30代半ばまで、僕の恋愛はほとんど動きませんでした。
生活は職場と家の往復で、新しい出会いはありません。誰かと知り合っても雑談が続かず、それ以上には進みませんでした。
学生時代から、飲み会では輪に入れず、端のほうで一人で飲んでいるような人間です。恋人には「何を考えているかわからない」と言われたこともあります。思ってはいるし、考えてもいる。でも、言葉が出てこないのです。
「話せるようになったら恋愛しよう」と考えていた時期もあります。でも、その日は来ませんでした。言葉を出すたびに緊張がよぎる体質は、いまも変わっていません。
このままでは何も変わらない。そう思って、マッチングアプリに登録しました。正直、最初は半信半疑でした。
決めていたのは「盛らない」ことだけ
始めるにあたって、決めていたことが一つだけあります。自分を大きく見せないことです。
- プロフィールを盛らない
- 背伸びをしない
- 嘘をつかない
- 「良い自分」を出しすぎない
理由は単純で、盛った自分を演じ続ける自信がなかったからです。会った瞬間に無理が見えるくらいなら、最初から等身大でいるほうが楽だと考えました。
それまでに僕は、話し方や心理学の本を読み、スクールにも通っています。それでも「流暢に話せる自分」にはなれませんでした。だから、アプリの中でだけ別人を演じても続かないことは、わかっていたのです。
プロフィールには、話すのが得意ではないことも書きました。趣味の欄にも、立派に見えるものではなく、実際に好きなものだけを並べています。
その結果、マッチングの数は多くなかったと思います。それでも、等身大の僕を見て「会ってみたい」と思ってくれる人とだけ、やりとりが続きました。
メッセージは「考えてから書ける」のが救いだった
対面の会話では、僕は言葉が出てきません。頭が真っ白になり、声がつまります。
でも、メッセージは違いました。時間をかけて、考えてから書けます。相手の文章を何度も読み返してから、返事を作れます。
「考えてはいるのに、口から出てこない」タイプの僕にとって、これは大きな救いでした。考えた中身を、そのまま相手に届けられる場だったからです。
長文は送りませんでした。自分の話を並べるより、相手の書いてくれたことに質問を一つ返す。その繰り返しです。
返事が遅くなるときは、遅くなるとだけ正直に書きました。うまい文章より、嘘のない文章。心がけたのは、それだけでした。
会ってからは、聞くことに徹した
初めて会った日、僕はやっぱり緊張していました。注文の声が裏返り、最初の10分は会話がぎこちなかったのを覚えています。
それでも何とかなったのは、話そうとするのをやめて、聞く側に回ったからです。
妻はその日、仕事の話や好きな食べ物の話をしてくれました。僕は「へえ、そうなんだ」「それでどうなったんですか」と聞いていただけです。気の利いた話は、一つもしていません。
途中、沈黙もありました。それでも、無理に埋めようとはしていません。相手が考えている時間まで、奪わなくていいと思ったからです。
あとになって妻に聞くと、「ちゃんと聞いてくれる人だと思った」そうです。面白い話を求められていなかったことを、このとき初めて知りました。
聞き方の考え方は 聞くだけ恋愛の始め方 にまとめました。そちらも読んでみてください。
半年で出会えたのは「僕の場合」です
アプリを始めてから、いまの妻と出会うまでは半年ほどでした。
ただ、これはあくまで僕の場合です。「アプリなら半年で結婚相手が見つかる」という話ではありません。もっと早い人もいれば、時間がかかる人もいるはずです。やりとりが続かず疲れたら、いったん離れる時期があってもいいと思います。
焦りそうになった時期もあります。それでも、「盛らない」という最初の決めごとだけは守り続けました。
僕が伝えたいのは、期間ではなく順序のほうです。話せるようになってから出会うのではなく、話せないままの自分で出会いの場に立てた。その順序を許してくれたのが、僕にとってはアプリでした。
使うときに確認してほしいこと
安全面についても、書かせてください。
マッチングアプリは18歳以上が対象です。そして、国に「インターネット異性紹介事業」の届出をしているサービスを選ぶことが大前提になります。本人確認の仕組みがあるかどうかも、確認しておくと安心です。
初めて会うときは、昼間の公共の場を選んでください。僕も初対面は、必ず駅の近くのカフェにしていました。やりとりの中でお金の話が出たら、その相手とは距離を置く。これも決めていたことの一つです。
結婚したいまも、緊張は続いている
結婚して、子どもが二人いるいまも、僕は口下手なままです。
保護者の集まりでは言葉がつまりますし、電話をかける前には小さく深呼吸します。「話せる人」になったから結婚できたわけではありません。話せないまま、等身大でいられる相手と出会えた。それだけのことです。
妻とは、いまも会話の多い夫婦ではないかもしれません。それでも、僕が聞いて、妻が話す。その形のまま、家族4人の時間は流れています。
もしあなたが、盛らない自分のままで恋愛を始めたいと思っているなら。僕のこの記録が、小さな参考になればうれしいです。