「英語を勉強しよう」と思い立って検索すると、出てくるのは英会話の広告ばかり。外国人講師と笑顔で話すレッスン風景を見て、そっとページを閉じる。日本語ですら話せないのに、英語で話せるわけがない——。

僕も長いあいだ、そうやって英語を諦めていました。

でも、あるとき気づいたんです。仕事で使う英語は、話す英語だけではありません。むしろ読む英語・書く英語の出番のほうが、場面としては身近にあります。この記事では、話し下手のまま英語を武器にしていく考え方を書きます。

英語=英会話、という思い込みを外す

英語というと、反射的にスピーキングを想像しがちです。でも、仕事の現場で英語が登場する場面を思い浮かべてみてください。

  • 英語のドキュメントやマニュアルを読む
  • 海外のツールやサービスの画面・エラーメッセージを理解する
  • メールやチャットで届いた英語に返信する

どれも、読み書きの世界です。特にIT系の仕事では、最新の情報や公式ドキュメントが英語で書かれていることが珍しくありません。「英語が読める」だけで、調べものの範囲がぐっと広がります。

会話が苦手なままでも、読めて書ければ役に立つ。まずこの事実を、思い込みの外に置き直すところから始まります。

書く英語は、話し下手の得意分野になり得る

そして、ここからが本題です。チャットやメールの英語と、僕たちの戦い方は相性がよくできています。

会話の英語は、即答の競技です。聞き取って、組み立てて、その場で発音する。日本語の会話ですら苦しい僕たちには、ハードルが高すぎます。

書く英語は違います。辞書を引いていい。翻訳ツールで下書きして、確認してから送っていい。考える時間が、いくらでも許されています。日本語のチャットで「考えてから書ける」ことに助けられてきた人なら、同じ強みが英語でもそのまま活きます。

しかも、書いた英語は積み上がっていく資産です。一度書いた言い回しは次も使えます。定型文のストックが増えるほど、返信は楽になっていきます。話す英語のような「その日の調子」に左右されにくいのも、ありがたいところです。

それに、仕事のチャットで求められる英語は、意外なほど短い文の集まりです。凝った表現も、完璧な文法も要りません。伝わることが目的なら、中学レベルの単語を並べた一文でも十分に機能します。「うまく書こう」より「短く正確に書こう」でいい。この割り切りができると、書く英語の心理的なハードルは一気に下がります。

日本語で話せない緊張と、英語は別問題

もう一つ、伝えたいことがあります。

僕たちが日本語で感じている緊張。噛まないかな、変に思われないかな、という不安。あれは言語能力の問題ではなく、人前で声を出す場面への緊張です。

だから、「日本語でも話せないのだから、英語なんて無理だ」という理屈は、実は成り立ちません。英語の読み書きに、あの緊張は関係ないからです。画面の前で辞書を引きながら英文を読むとき、心臓は速くなりません。

日本語の会話が苦手なことと、英語という技能を積み上げられるかどうかは、別の話。切り分けて考えると、英語の見え方が変わります。「話し下手だから諦めるもの」ではなく、「話し下手でも積み上げられる数少ない技能」になるんです。

「聞く力」はリスニングにも通じる

このサイトでは、会話は聞くことから始めればいい、と繰り返し書いてきました。実は英語も同じ構図です。

英語の技能のうち、リスニングとリーディングは「受け取る側」の技能です。話すのが苦手でも、聞くことと読むことは邪魔されません。相手の話をじっくり聞く姿勢に慣れている人は、英語でも「まず理解する」学び方と相性がいいはずです。

僕の場合は、興味のある分野の英語の動画を、字幕付きで眺めることから始めました。話す練習はしていません。それでも、読めて聞ける範囲が広がるだけで、仕事で拾える情報は少しずつ増えました。

念のため書いておくと、これは「すぐ話せるようになる方法」ではありません。読める・書けるようになるにも、それなりの時間がかかります。数ヶ月で劇的に変わる、という類いの話ではないです。ただ、毎日少しずつ積んだ分だけ、確実に手元に残ります。この積み上げ方については話せなくても、強みで生きていくをどうぞ。

話せる日は、あとから来てもいい

誤解のないように書いておきます。話す英語を一生避けよう、という話ではありません。

読めて書ける英語が増えると、頭の中に英語の材料がたまっていきます。将来もし話す必要が出てきたときも、ゼロから始めるのとは違う地点に立てるはずです。順番を変えるだけ。話すことから始めない。読む・書く・聞くで足場を作って、話すのは最後でいい。

英会話教室の広告がまぶしく見える夜も、焦らなくて大丈夫です。僕たちには、僕たちの順番があります。