社内の懇親会で、初対面の人と二人きりになりました。 沈黙が怖くて、僕は思い切って聞きました。 「ご趣味って、何かあるんですか?」 返ってきたのは、「うーん、特にないですね」。 会話はそこで止まり、僕は「自分はつまらない人間だ」と落ち込みました。 「あの人と話すの、気まずいな」と、次の懇親会まで引きずったものです。
似た経験のある人は、多いと思います。 でも、あの場で会話が止まった原因は、僕やあなたの中身ではありません。 質問の形が、答えにくかっただけかもしれないのです。
答えにくい質問には、3つの共通点があります
昔の僕の質問を振り返ると、だいたいこの3つのどれかでした。
範囲が広すぎる
「趣味は何ですか?」「最近どうですか?」 広い質問は、一見親切に見えます。 けれど相手からすると、答えの候補が多すぎて絞り込みに疲れます。 その結果、いちばん無難な「特にないです」が選ばれるのです。
いきなり感想を求める
「この会、どう思います?」と、僕もよく聞いていました。 感想を言葉にするのは、事実を答えるより数段むずかしい作業です。 初対面ならなおさら、本音をどこまで出すかの判断も加わります。 気を使わせる質問は、短い答えで終わりやすくなります。
知識の有無を試す形になっている
「あの映画、観ました?」 観ていれば話は続きますが、観ていなければ「いえ」で終わります。 しかも相手には、小さな「不正解感」が残ってしまいます。 相手の答えを運任せにする質問は、止まりやすいのです。
答えやすい質問の3条件
裏返せば、そのまま作り方になります。
1. 範囲を狭くする(二択がいちばん楽です)
「休みの日って、家で過ごす派ですか?外に出る派ですか?」 二択なら、相手は選ぶだけで答えられます。 そして選んだあと、たいてい理由を足してくれるのです。 「家ですね。最近は動画ばっかりで」——ここから会話が転がります。
2. 感想より先に、事実を聞く
「今日は、どちらから来られたんですか?」 「この部署は長いんですか?」 事実は、考えなくても答えられます。 事実を2、3個聞いたあとなら、感想の質問にも答えてもらいやすいです。 順番は「事実が先、感想があと」。僕はこれだけ覚えています。
3. 相手の答えの中の言葉に「?」を付ける
質問を毎回ゼロから作ると、頭がすぐ品切れになります。 だから2問目からは、相手の答えから材料をもらうのが僕の定石です。 「実家が北海道で」と返ってきたとします。 なら「北海道って、いまの時期は涼しいんですか?」です。 相手が自分から口にした言葉は、相手が話してもいい領域です。 外れにくく、詮索にもなりにくい質問になります。
質問のあとの「受け方」で、続くかが決まります
いい質問をしても、受け方が素っ気ないと会話は止まります。 答えが返ってきたら、まず相槌で受けてください。 「へえ、そうなんですね」「いいですね」。 質問→答え→すぐ次の質問、を繰り返すと面接のようになります。 僕の目安は、質問1回につき相槌2〜3回です。 質問は会話のエンジンではなく、点火装置にすぎません。 火がついたら聞く側に回るのが、話さなくていい雑談術の基本形です。
「特にないです」と返ってきても、失敗ではありません
条件を整えても、短い答えの日はあります。 そのときは「そうなんですね」と受けて、別の狭い質問に移ります。 あるいは、そこで切り上げても構いません。 相手に話す気力がない日は、誰にでもあるからです。 質問の形は整えられますが、相手の状態までは変えられません。 そこから先を自分の責任にしないことも、続けるコツだと思っています。
質問が思いつかない日の「保険」を2つ
とはいえ、その場で質問を組み立てる余裕がない日もあるはずです。 だから僕は、定番の事実質問を2つだけ「保険」として持ち歩いています。 ひとつは場所の質問、もうひとつは時間の質問です。
- 場所:「今日は、どちらから?」「オフィスはこの近くなんですか?」
- 時間:「この仕事は長いんですか?」「いつ頃から始められたんですか?」
場所と時間は、誰にでも必ず答えがある領域です。 だから、空振りがほとんど起きません。 2つで足りるのかと思われそうですが、足ります。 1問目の答えに相槌を打ち、答えの中の言葉に「?」を付ける。 そこから先は、先ほどの3条件が勝手に回り始めてくれるからです。 実際、僕の懇親会はほぼこの型だけで回っています。 保険が2つあると分かっているだけで、話しかける前の緊張も軽くなりました。